インプラントの治療期間や通院回数の目安は?長引きやすい原因も紹介
失った歯を取り戻せるインプラント治療ですが、外科的な手術が必要になるため、一般的な歯科治療よりも完了までに時間がかかります。
仕事やプライベートの都合によっては先に予定を立てる必要があり、「どれくらいの期間がかかるのか知っておきたい」と考えることもあるでしょう。
インプラント治療に必要な期間を知っておけばスケジュールを立てやすくなります。
この記事では、インプラントの治療期間や通院回数の目安、治療期間が長くなるケースなどについて詳しく紹介します。
インプラントの治療期間の目安
インプラントの治療期間の目安はどれくらいになるのでしょうか。
歯科医院の方針によって違いはありますが、ここでは一般的な目安を紹介します。
総合的な治療期間は約3か月~1年
インプラント治療は段階を踏んで行われますが、すべての段階を合わせた治療期間は一般的に約3か月~1年が目安です。
「最短でも約3か月もかかるのか」と驚くかもしれませんが、インプラント治療はむし歯の治療のように短期間で終わるものではありません。
精密検査のあとにインプラントの型を取り、次の段階でインプラントの埋入手術、人工歯根と骨の結合を待つ期間、それから人工歯の設置……と多くのステップが必要です。
とはいえ、治療期間が長いからといってプライベートやお仕事に大きく影響しないスケジュールで進められないわけではありません。治療計画を立てる際、歯科医師に相談してみてください。
手術そのものは1日で完了
インプラント治療というと埋入手術をイメージすることも多いのではないでしょうか。実際、治療の過程にはインプラントをあごの骨に埋め込む手術があります。
インプラント埋入手術そのものは1日で完了しますが、あごの骨の量や硬さによっては2回に分けて手術をする(2回法)こともあるため、その場合は最大2日ほどかかります。
2回といっても連日続けて行うわけではなく、1回目の手術のあとに状態が安定してから2回目を行うという流れです。
治療期間に幅がある理由
約3か月~1年と聞くと、「なぜそんなに治療期間に幅があるのだろう」と思うのではないでしょうか。
治療期間に幅が出る理由は、患者様1人1人の状態に違いがあるためです。
例えばインプラント治療ではあごがしっかりしていて、むし歯や歯周病などがない健康的な歯ぐきであれば、順調に治療が進みます。
一方、むし歯や歯周病などの口腔内トラブルやあごの骨に問題がある場合は、インプラント埋入手術の前にそちらの治療が必要です。また、生活習慣や体質も治療期間に影響します。
このような理由から、治療期間には幅が出るのです。
基本的には治療が始まってから言われることはなく、治療計画の段階でおおよその期間が分かります。
人によっては期間が延びることもありますが、その際も早い段階で説明されるため、プライベートや仕事との調整もしやすいでしょう。
治療段階ごとの期間や通院回数の目安
治療にかかる期間を治療段階ごとに見てみましょう。通院回数の目安も紹介しますので参考にしてください。
カウンセリング・精密検査
インプラント治療はインプラントの埋入手術のためのカウンセリングと精密検査からスタートします。
● 通院期間の目安:2日~2週間
● 通院回数の目安:2~3回
口腔内やあごの骨をレントゲンやCT撮影でチェックし、患者様の健康状態や体質などの細かい聞き取りをして治療計画を立てていく流れです。
治療計画、インプラント治療にかかる費用、治療期間や通院回数の目安などはこの時に提案されます。
患者様ご自身が提案に納得して、「この歯科医院でインプラント治療を受けよう」と決心すれば本格的なインプラント治療に進みます。
インプラント手術に必要な事前治療
カウンセリングと精密検査のあと、事前治療が行われることがあります。
● 通院回数・通院期間の目安:患者様の状態が改善されるまで
精密検査で口腔内や骨などに問題が見つかった場合、治療で改善する必要があります。
事前治療はインプラント埋入手術やそのあとのメンテナンスなどを問題なく進められる状態にすることが目的です。
例えばむし歯や歯周病があると歯や歯ぐきの状態が悪くなり、そのまま放置しておくとインプラントに悪影響を及ぼすため治療が必要です。
また、患者様によっては歯周病や骨粗鬆症などで骨量が減っているケースがあります。
インプラント埋入は骨に一定の量が必要になるため、骨量を増やす造骨治療や手術を行うことになるでしょう。
治療期間は症状ごとに異なります。事前治療の必要がない患者様はこの期間を取らず、次のステップであるインプラント埋入手術へ進みます。
人工歯根の埋入施術
いよいよインプラント(人工歯根)を埋め込む手術です。「1回法」「2回法」があり、手術そのものはどちらも1日で終わりますが、通院期間や通院回数には違いがあります。
【1回法】
● 通院期間の目安:1日~2週間
● 通院回数の目安:1~2回
1回法ではインプラントとその接続部になるアパットメントが一体型になったインプラントを埋め込みます。手術時間は約1~3時間が一般的です。
【2回法】
● 通院期間の目安:3~7か月
● 通院回数の目安:4~6回
2回法では1回法と異なり、1回目の手術ではインプラントだけを骨に埋め込み、定着するまで期間を空けます。1回目の手術時間は約1~3時間です。
2回目の手術で安定した人工歯根にアパットメントを装着すれば、一連の手術が完了します。2回目の手術時間は約30分です。
人工歯根を定着させる期間
2回法で人工歯根を設置した患者様は、1回目と2回目の手術の間に定着させる期間を取る必要があります。
期間は患者様によって幅があり、3か月の場合もあれば6か月の場合もあると考えておきましょう。歯科医師が判断し、適切な定着期間を提案します。
人工歯根をセット
埋入手術で切開した傷がふさがり、インプラントが安定すれば人工歯のセットへ進みます。
● 通院期間の目安:1日
● 通院回数の目安:1回
細かい確認(噛み合わせや周囲の歯や歯ぐきの状態など)を行い、人工歯とアパットメントを接続して完了です。
これで失った歯を取り戻し、噛み締める感覚も見た目も自分の歯のように感じられるようになります。
このあと、今後の定期メンテナンスの説明や、自宅でのセルフケア(歯磨き、フロス、デンタルリンスなど)についての指導が行われることもあります。
メンテナンスやセルフケアはインプラントを長持ちさせるために欠かせないものになるため、分からないことがあればこの時点でどんなことでも質問しておきましょう。
手術前の事前治療で時間がかかることも
人工歯根の埋入手術前には事前治療が行われることがあると説明しましたが、内容によっては時間がかかるケースがあります。
ここでは具体的な事前治療の種類について紹介します。
口内環境の改善
インプラント治療は口内環境が整っていなければ進められません。患者様によっては事前治療として以下が必要になることもあります。
● 禁煙
● むし歯
● (必要であれば)抜歯
喫煙は歯ぐきの血流を妨げ、インプラントを埋め込む歯ぐきに十分な栄養を運べなくなってしまい、インプラントの定着を悪くしてしまう原因です。
歯科医院によっては、インプラント手術前に1~2か月ほどの禁煙を勧め、より健康な歯ぐきへの回復を目指します。
むし歯もインプラント治療を順調に進めるために事前治療が必要です。治療しても改善の見込みがない場合には抜歯になることもあります。
身体状態のケア
患者様の身体状態によっても、すぐにインプラント治療が始められないケースがあります。
例えば糖尿病の場合、インプラント治療ができないということはありません。
しかし、血糖のコントロールがあまり上手くできていないのであれば、術後のインプラント周囲炎やインプラント脱落の恐れが高まるため、主治医と相談してケアしていく必要があります。
高血圧症の場合もやはりインプラント治療は可能ですが、手術中に麻酔で血圧が上がる恐れがあるため、生活習慣の見直しや服薬による事前の改善が求められるでしょう。
ほかにもインプラント治療で悪影響が考えられる身体状態の患者様には、それぞれの状態や事情に合わせた事前治療が行われます。
骨量の増量
インプラントの埋め込みをするためには、骨にある程度の骨量が必要です。骨の高さ、厚みなどが足りないと判断された場合にはインプラント治療をすることはできません。
かといってインプラント治療を諦める必要はありません。
骨を増やす骨造成治療を事前治療として取り入れ、インプラント治療に適した骨量になれば問題ないためです。
また、歯科医院によっては骨造成治療ができない患者様もインプラントができる方法を提案することがあります。
山崎デンタルクリニックでも提案可能ですので、骨造成治療が難しい患者様もお気軽にご相談ください。
歯肉トラブルの治療
歯肉炎や歯周病がある場合にはその治療が必要です。特に歯周病には注意しなければいけません。
先に少し触れましたが、インプラント治療後、「インプラント周囲炎」になってしまう患者様もいます。
インプラント周囲炎の原因はおもに細菌感染によるもので、周囲の歯が歯周病だった場合、そこから感染して罹患してしまうのです。
インプラント周囲炎は痛みや腫れに悩まされるだけではなく、せっかく埋め込んだインプラントの定着を悪くしたり、抜け落ちたりさせる原因になります。
インプラント周囲炎のリスクを少しでも減らせるように、先に治療できるものはすべて治療して、健康な口内環境を整えておきましょう。
治療期間が長くなりやすいケース
インプラント治療の平均的な治療期間は約3か月~1年と紹介しましたが、患者様の状態によってはその期間が長くなる場合があります。
ここでは治療期間が長くなりやすいケースについて紹介します。
糖尿病で免疫力などが低下している
糖尿病を患っていると治療期間が長引くことがあります。糖尿病は免疫力や回復力を低下させる特徴があるためです。
免疫力や回復力が低下している場合、埋め込んだインプラントの周囲が細菌に感染しやすくなってしまいます。
その結果、あごの骨とインプラントの結合が従来よりも遅くなってしまう可能性が高まるのです。
このような事態を防ぐためには、事前治療で血糖のコントロールを適切にしておくことや、インプラント手術後のメンテナンスを入念にするなどの工夫が必要です。
喫煙習慣
前述の通り、喫煙は血流を妨げる原因になり、歯ぐきへ十分な栄養を運べなくなります。
手術の傷を治すためにも歯ぐきへの十分な栄養は必要なのですが、喫煙していると順調に栄養が届かず、回復が遅くなってしまうでしょう。
傷が塞がらなければいつまでも人工歯の装着に移れません。喫煙習慣が治療期間を長引かせることになります。
多くの歯科医院では事前治療として禁煙を提案します。順調なインプラント治療を進めるためにも、禁煙にトライしてみてはいかがでしょうか。
年齢や体質
患者様の年齢や体質も治療期間に関わります。
傷の回復は身体が若いほど早く、また、体質によってもその速度は変わります。
かといって、高齢の患者様がインプラント治療を諦める必要はありません。インプラント治療に上限年齢はなく、1人1人の回復力や状態に合わせながら治療を進めることができます。
手術部位の感染症
埋入手術で切開した傷が細菌に感染することも、治療期間が長くなる原因です。
傷が細菌に感染してしまうとあごの骨にインプラントがしっかり結合しにくくなります。
あごの骨とインプラントが結合しなければ次の段階へ進めず、感染症状の治療を優先しなければいけません。
感染は埋入手術後のデンタルケアなどで予防できることが多いため、歯科医師の指導を受けてみてください。
術後の定期メンテナンスも重要
インプラント治療は術前のカウンセリングや精密検査から手術、人工歯の装着の流れで完了しますが、その後は適切なメンテナンスも必要です。
メンテナンスをしないまま生活していると、インプラント周囲炎や噛み合わせのズレなどの徴候に気がつかず、インプラントの寿命が短くなってしまうことがあるためです。
歯科医院での定期的なメンテナンスや自宅でのセルフケアなどを積極的に行い、大変な治療を乗り越えて取り戻した歯と長く付き合いましょう。
まとめ
インプラント治療の総合的な治療期間は約3か月~1年が目安です。患者様1人1人の状態や事前治療の有無で変わりますが、事前に治療計画を立てるため、ある程度の予想をつけやすくなっています。
インプラント治療は時間がかかり、プライベートやお仕事との兼ね合いが大変かもしれませんが、辛抱強く進めてみてください。難しいと感じた時には歯科医師に相談するのもおすすめです。
山崎デンタルクリニックはインプラント治療の経験や実績が豊富な歯科医院です。患者様が治療を進めやすい治療計画を提案しています。
「できるだけスピーディーに進めたい」「骨量が少ないので不安」などの希望や悩みがあれば、ぜひ事前にご相談ください。患者様1人1人にベストな方法でインプラント治療を進められます。